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手を伸ばせばいくらでも手に入るのに
銀 紙
We are friends forever.
「リーネ様、またここにいらしたんですか。」
日当たりのせいか、平素より大きく育ったシロツメクサを足でよけながら、騎士らしい出で立ちの青年は、その花の真ん中の白い猫足の華奢な円卓に少々うつぶせながら、同じ造りのイスに腰掛ける少女に声を掛けた。
「ああ、サイラス。お稽古の途中?」
「いえ、今日は夜勤だったので、これから休憩です。」
両刃の剣を納めた鞘を後ろに回し、その円卓のそばへ寄る。
「水臭いわよ。ふたりのときくらい、敬語なんかで話さなくてもいいわ。」
「一国の后相手に、そういう訳にはいきません。」
「あきれた。あなたたち本当に気が合うのね。」
「……まさか、グレンも?」
「そうよ。」
口ぶりとは裏腹に、くすくすと、リーネと呼ばれた少女は楽しそうだった。
「さっき、そうね、ちょうどあなたと入れ違いくらいに彼が来て、これを置いていったの。」
そう言いながら、リーネは手元にあった小さな箱をサイラスの前に差し出した。
「……キャンディ?」
「城下で流行ってるお店のものらしいの。」
「キャンディなら、いくらでもお取り寄せできるでしょうに。」
「それじゃあ、だめなのよ。」
言葉を切ると、その箱の中から一輪の花を取り出した。
「ほら、見て。本物みたいでしょう?」
「それは、アイツが?」
「そう。いっしょに食べましょうって言ったら、さっきのあなたみたいな口をきいて、でも、って無理やりひとつだけ持たせたら、その場でこれを。」
「へぇ……本当に、本物みたいだ。」
包装紙の花をつまみあげ、まじまじと見ながらサイラスは感嘆した。
「今日は時間がなくてそれだけだけど、この前は他にも、鳥や、蝶。カエルなんかも折ってくれたのよ。」
「アイツに、こんな才能があったなんて、驚いたな。」
花を卓上に戻しながらひとりごとのように呟くサイラスに目を瞠り、
「あら、サイラスは知ってるのかと思ったわ。」
「そんなに前から?」
「ええ。昔三人で遊んでいた頃からよ。いつもわざわざ城下からキャンディを買ってきてくれて。今もお部屋にとっておいてあるわ。……私だけもらっちゃっていたのね。」
「アイツは私にこんな洒落たことなんかしてくれませんよ。それにしても、よく大事にとっておいてありますね。」
リーネは首をすくめて申し訳なさそうに置かれた花を箱に戻す。手つきはまるで高級な宝石をしまうかのようだ。
「私には、何より価値のあるものだもの。」
「銀紙の花が、ですか?」
「ええ。」
正午間近の高い陽射しを喜ぶかのように箱の中で反射する銀色の花を、少し眩しそうに見つめる。
「これを見ていると、昔を思い出すの。まだ、私たちが三人で遊んでいた頃のこと。ねえ、」
うつむいたリーネは語尾をサイラスに向け、同時に顔を上げた。
「また、私と遊んでくれる?」
そんな、婚姻を済ませて少し大人びたリーネに似つかわしくない子供っぽい発言に、思わず表情をほころばせたサイラスは、
「今度は俺がキャンディを買ってくるから、グレンに折り方を教わろう。」
「……うん。」
あの頃のような空気に、笑った。
(僕らはずっと友だち。)
この3人はたぶんうちのサイトではずっとこのまんまです。
こんなにフラグ立てといて!笑
ずっとパソコンの中で眠ってました。
吉野[o8/18 * 22:45]
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