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仕草
面影
目で追うのに
目を逸らす
記 憶
You and you look like well.
「魔王、」
さして強くもなく弱くもない日差しが生温く影をつくる。
「魔王、」
長い動きの少ない影と、
短いよく動き回る影が、
マーケットの少し青いリンゴをかすめる。
「もう、また無視する。」
金髪にきらきらと日差しを反射させ、後ろ向きに器用に歩く少女は、
小さな荷物を後ろ手に頬を膨らませる。
「‥‥そう見えたか?」
少女の視線の先、長い影の持ち主の男は、
右手に少女の物より二回りほど大きな荷物を抱え、少女の目も見ずに答えた。
「見えたよ。」
少し拗ねたように上目遣いで睨み上げ、不平を主張する。
しかし、男は悪びれる様子もなく、「何の用だ。」と深紅の瞳をちらりとだけ向けた。
「用事がないとお話したらだめ?」
目付きの悪い男に怯む事もなく、今度はまっすぐに男の青白い顔を見た。
「‥‥話す事などない。」
嫌悪や照れからでなく、本当に話す事がないように見える。
見た目にも無口な男と、人懐こそうな少女の組み合わせは異様だったが、
それを怪訝に思う人間はいない。
昼下がりの緩やかな時分。
昼食と重なり、マーケットはさながら真夜中のようだった。
「なら、私が訊いてもいい?」
口角を僅かに上げ、何か悪巧みをするように少女は笑った。
「ね。それならいいでしょ?」
「好きにしろ。」
どこか投げやりな言葉だが、少女は満足したらしく何を話そうかと思案し始めた。
無視をしてしまえばそれですむのに、男は少女に応える。
冷酷な深紅が、その時ばかりはほんの僅かに綻ぶのは何故だろうか。
「サラさんって、どんな人?」
少女の核心を突く発言に、男は沈黙する。
元々多弁ではないため、その変化に気付いた者はいなかったのだが。
「姉上は‥‥そうだな。」
たじろいだ割に淡々と、
そして意外に素直に少女の質問に真面目に答えようと思考を巡らせる。
少女に纏わりつく雰囲気。
仕草
面影
「少しお前に似ている。」
一瞬元より大きな碧眼を更に見開いてから、少女は「ほんと?」と、
驚きと嬉しさの中間みたいな中途半端な表情で微笑んだ。
「ほんとに?」
二度目に訊いた時、男は答えずただ「着いたぞ。」とだけ言って、
小さな宿屋のドアを開けた。
「またはぐらかした。」
不満がちに変わる少女の口許。
しかし男は相手にしない。
「おかえりマール。遅かったな。」
ロビーに降り立った、男とは違う深紅の頭髪をした少年が、少女に駆け寄る。
「ごめんねクロノ。あちこち周っちゃって。」
少年に詫びるが、彼の意識は男に向いている。
闘争心をむき出しにした翡翠の瞳は、遠くを見る深紅と交わらない。
「‥‥おかえり。魔王。」
「‥‥気になるのか?」
ぶっきらぼうに挨拶をする少年の図星を突く。
ほら、翡翠は、すぐに動揺し始める。
「別に、気になんかなるわけないだろ。」
「似ているな。」
「え?何に。」
闘争心を引っ込めて、少しばかり沸いた興味に従順に尋ねる。
少年と
少女は
「‥‥飼っていた猫に。」
「何だとコラ。」
幼かった姉と己によく似ている。
「アハハ。」
少女の笑い声で、少年も笑う。
男は、
「無視ではない。ただ、思い出していたのだ。」
誰にも聞こえないような声で呟き、中央階段を昇る。
「あれ?魔王、今からお昼だけど。」
擦れ違い様に、肩で切り揃えた髪を揺らす聡明そうな瞳の少女に訊かれるが、
「先に食べろ。」と、それだけ置いてテラスに出る。
紺碧の空は、俄かに雲を裂き強い光を男に刺す。
反射した腰の御守りに視線をやり、僅かに口許を緩ませた。
「姉上、貴女を忘れた事はない。」
重なる碧眼
仕草
面影
目を逸らすのは
後ろめたい自分を隠したいからだ。
(君と貴女はよく似ている。)
なんか、すごい突発的にすみません。
尻切れトンボ気味。笑って許してください。
魔王様が、時折マールとサラを重ねて見ていたらいいなという話。
あえて、名前をあんまり出さないでやってみました。
誰が誰だか、わかるといいのですが…。
吉野[o1/18 * 22:49]
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