甦るのは
一枚の夢


  白 黒
Colorful Monochrome.


白い光が、黒い影を伸ばし、一番大切な人を飲み込んで、

「あ、起きた。」

目が覚める。

「……何の用だ。」

そろそろ夜も明けるのか、つい先ほどまで真上にあった月が、今は遥か西の方角で白んでいた。
名も知らない腕一回りほどの木に寄りかかる自分を、物珍しそうに少女が覗き込む。今はトレードマークの眼鏡を外した、ルッカという名の少女。

「ううん、別に。最初起きてるのかと思って、寒くて目が覚めちゃったから、話し相手を探してたの。」

そういうと少女は毛布を抱えて木の反対側に回って座り込んだ。

「用がないのなら消えろ。」
「いいじゃない。ちょっとくらい。ほら、キジバトかしら。」

あっさりと聞き流され、特徴的な鳴き声でなく鳥に耳を澄ませる。

「魔王は疲れないの?」
「何の話だ。」
「その格好よ。」

木にもたれかかり眠る姿はさぞ寝苦しそうだろう。ルッカでなくとも、気にかけてしまうはずだ。

「お前には」
「関係ないんでしょ?」

クスクスと笑い始める少女に閉口する。

「夢、ちゃんと見られてる?」
「夢など、」

先ほどまで見ていた悪夢。
色を失った夢。
いつ頃からか、やはり姉を失ったあの時からか、

「必要ない。」

モノクロームの夢が必要とは到底思えなかった。


「あら、そんなことないのよ。」

少女は身を乗り出し、気配に振り返った魔王と目が合う。

「夢は、記憶を整理する際に必要な情報と不必要な情報とを分ける役目があるそうよ。」

この少女の知識のキャパシティはどれ程なのか。
呆れるほどに様々な事柄に詳しい。

「覚えておきたい出来事を何度も夢で見ることによって忘れないようにしてるんだって。」
「くだらんな。」
「そうかしら。」

小さくため息をつきながらそう返し、それがルッカの自尊心を刺激することだと気付き後悔した。

「私は、その夢のお陰で今の自分があるんだと思うわ。」
「俺はそうは思わんな。」

あんな夢、もうなかったことにしてしまいたい。
だって、夢の中で出会う姉は、いつも、暖かくない色をしている。


「その夢を乗り越えてみせるって、思わない?」

どうせ希望に満ち溢れた夢だったのだろうと思い返事をしていた魔王は、思っていた返事と違うのと、いつの間にか会話を続けていることの両方に、少し驚いた。
こんなに話を長引かせる気はなかったはずなのに。

「……そうかもな。」

あの夢は、あの白黒は、俺に何をしろと訴えているのか。
そんなもの、ひとつだろう。

「そのために、ここまで来たのだ。」

ストンと膝を折って木の根の間に腰を下ろす。
目蓋を閉じると少女の声。

「知ってる?魔王。色に興味ない人って夢がモノクロになっちゃうんだって。」

目は伏せたまま、俯いたまま。

「魔王なら、きっと綺麗な色の夢が見れるわね。」

思わず目蓋を開きそうになった。

「その位置からだと、朝日が一番綺麗に見えるって、知ってるんでしょ?」

何も答えずにいると、「おやすみ。」と、それだけ告げて、さっさと毛布にくるまってしまった。


「……いつの間に、知られたんだ。」

野営二日目。
確かに昨日もここにいたが、誰かに理由を話す訳はない。


久方ぶりの二度寝で見た夢は、暖かな色をしていた。






(カラフルな白黒。)

直前までクロノにするかルッカにするか悩みました。

白黒な夢を見たことなかったので想像ですみません。

夢の知識は浅いんで間違ってたらすみません。

あれ、謝ってばっかりだ…。


吉野[o5/3o * oo:22]