今も縛る、

約束。

  薬 指
A disease to work for late.


「ルッカ、これ、はめとけってさ。」

戦闘終了後、モンスターが落としたパワーリングを仲間のカエルから渡される。

鬱蒼と茂る緑より黒に近いガルディアの森。
城を守るように生えるそれは、弱い朝の陽射しをほとんど全部吸収し、辺りは薄ら寒い。

「ありがと。」

ルッカは今の戦闘メンバーで唯一の女性。力のバランスを考えて渡してくれたようだ。
口ぶりからすると頼んだのは、恐らくさっきからきょろきょろとしながら地図を睨みつけているクロノだろう。

「……なによ。」
「いや、」

仲間の不躾に注がれる視線に、指輪をはめる手を止める。

「女って、やっぱりそういうもんかと思ってな。」

視線の先は、薬指。
何もはまっていない。

「ああ、結婚指輪以外は、ここにはめないってやつ?」

察しのいいルッカは、それに気付いた瞬間クスクス笑い始めた。

「そうね、憧れるけど、」

リングは、少し大きく、左の小指でくるくると回っている。

「私はちょっと、違うかな。」
「訊いてもいいのか?」
「あら、興味あるの?」
「言いたそうだからな。」
「あ、ばれたか。」

チラッとクロノを見遣る。距離は約5メートル。
この距離なら、今のクロノには聞こえないだろう。

「予約なの。」
「アイツのか?」
「そう。」

何もはまっていない薬指の関節を、撫でる。

「クロノは、ああじゃない?」

地図を上下させたり、と思ったら、茂みを無闇に覗き込み何かを見つけたらしい。
とどのつまりは落ち着きがなく、好奇心が旺盛であると言いたいのだろう。

「だから、覚えたてのこととか、すぐ言いたくなるのよ。」

そういえば、新しく得た技は片っ端から試していたな。と、カエルは思考を巡らせつつ相槌を打つ。

「その結果が、これ。」

くるくる回る指輪の隣、左の薬指。
それを太陽に透かすように上に掲げた。

「いつだったかな…だいぶ小さい頃ね。ウチに遊びに来たときにクロノが針金の指輪をくれたの。針金よ、笑っちゃうでしょ。」

それでもルッカはどことなく嬉しそうに話を続ける。

「大きくなったらもっと良いやつあげるって、それを右の薬指に。左右間違ってたの。」
「らしいと言うか、なんと言うかだな。」
「ほんと。針金で、左右間違ってて。きっと薬指にはめる指輪の意味も、半分も理解してないのに。だけど、」
「嬉しかったんだろ?」
「……なんでかね。」

にやりと先を越される。
小さく呆れたように、ルッカは笑った。

「あ、」
「どうした?」
「ううん。ちょっと落ちちゃっただけ。」

左手の小指をすり抜けたリングを慌てて拾う。
好意も威力もムダにはできない。

「貸してみろ。」
「ちょっ、」
「また抜けちまうと厄介だからな。」

リングは、左手の小指の隣に収まっていた。

「あ、…ありがと。」
「……重症だな。」
「なにがよ。」
「いや、お互い幼なじみには難儀してるなと思ってな。」
「……そうね。」

顔を見合わせて、ふたりは笑った。それに気付いたクロノは、「なにやってんだよ!」と、疎外感に不平を漏らす。

「小さい頃の約束の方が、案外破れないものよね。きっと、あっちが覚えてようが覚えてなかろうが、ね。」
「そうだな。」
「カエルも、なにかあったの?」
「さぁな。」
「……ケチ。」
「ほら、大将が呼んでるぜ。とびきり鈍感のな。」

針金の指輪は、確か、三番目の引き出し。

「……この小指ならぴったりかしら。」
「?、なにがだ。」
「さぁな。」
「お前……。」
「仕返し。」

そう言い残し、カエルを追い越して走る。
見えてきたのは、大きなガルディア城と、少し高いクロノの横顔と、さらに高い冬の空。

「なぁ、」
「なに?」
「針金よりはだいぶ成長しただろ?」

さっきの会話を聞かれていたのか、はたまた約束を覚えていたのか、
ただ単に、たまたま左手の薬指にピッタリだったのか。

「まぁ、今はこのくらいで勘弁してあげるわ。」

それとも、今までわざわざ薬指のサイズに合う指輪を探し回っていたのか。

クロノの思惑は、計り知れなかったが、それでいい。
ふたりは幼なじみだという、一生変わらないことの証明にはなりそうだ。






(遅効性の病。)

麻疹てきな。(@サブタイトル)

もうこの後は各々の想像力に任せます…。(逃走)

私にはこれ以上は…むり…!!

なんか途中カエルとルッカがいい雰囲気になっちゃってあせりました。

あれ、そんな予定なかったんだけどな…。

でもクロノくんがオイシイとこもっていきました。


吉野[o6/21 * oo:15]